トラベルガイド
North Karelia (北カレリア)
北カレリア地方は、ロシア国境と接する地理的な位置からも東西の文化が融合する地点。湖と小高い山の風景は、多くの芸術家がインスピレーションを受けました。コリ国立公園から臨むピエリネン湖の風景は、森と湖の国を象徴するフィンランドの原風景ともいえるでしょう。また、東方教会の文化圏に位置するカレリア地方では、独特な文化が今でも色濃く残り、カレリアならではの食や人々にも出会うことができます。
カレリア地方の文化や風景に影響を受けた芸術家の代表が作曲家のシベリウスです。交響詩「フィンランディア」を始め、カレリア地方を題材とした作品も多く残しています。国民的叙事詩「カレワラ」は、カレリア地方に伝わる口承詩をエリアス・ロンロートが集めたもので日本語を始め世界各国で翻訳されています。カレリア地方では、ハイキング、カヌー、ラフティングなどのアウトドア・アクティビティも楽しめます。
■観光情報
Visit Karelia http://www.visitkarelia.fi/fi
カレリアとカレヴァラ
カレリア地方はロシアとの国境に位置することもあり、長い間戦争にまきこまれてきました。現在の国境が決められたのも第二次世界大戦後で、ロシア領内にもカレリア地方の文化や言語が残る地域が残されています。現在フィンランド側のカレリア地方はヨーロッパ最東端という地理的な位置からも、東西文化の交流地域として注目され、美しい風景や伝統文化は観光客ばかりかフィンランド人をも魅了します。
フィンランドの民族叙事詩 「カレワラ」はフィンランドで歌い継がれてきた口承歌謡物語。物語は、世界と人間の誕生を語る神話、英雄を主人公として繰り広げられる冒険、儀式に関係する呪文などが詩で構成され、フィンランド語系の言語を話す諸民族の間で口承によって伝えられてきた。「カレワラ」は、医師エリアス・ロンルートがカレリア地方を歩いて土地の古老などから採録して書き起こし、1835年に書物として発行された。当時フィンランドは、スウェーデン領の時代を経てロシアの支配下にあり、政治や経済で使用される公用語はスウェーデン語やロシア語で、フィンランド語は一般市民の間では使用されていながらも、文化語としては認められていなかった。フィンランド語で発行された「カレワラ」はフィンランド独自の言葉の価値をフィンランド人自身に目覚めさせただけでなく、小国フィンランドの存在をヨーロッパに認知させた。カレワラの物語は、世界各国で訳され、フィンランド国内では「カレワラ」を基にした芸術作品も多く生まれている。
カレリアから生まれた芸術
〔The Mage Slaves〕1893
エーロ・ヤルネフェルト
■カレリア地方の伝統的焼畑農業で懸命に土地を耕す貧しい農民の姿が伺える。 〔Lemminkainenens Mother〕1897
アクセリ・ガッレン・カッレラ
■「カレワラ」を題材にした絵。写実的、抽象的な2面が融合されており、黒い湖や花、血がついた石で「死」を表現し、母親の絵は彼の母をモデルにしたという。息子に死が近づく時の母親の気持ちが強く伝わってくる。
〔Aino Myth〕1891
アクセリ・ガッレン・カッレラ
■「カレワラ」のアイノ神話を題材にしている。ヴァイナモイネン(老人)とアイノ(娘)の物語とカレリアの自然が美しく描かれている。